IPAより、2026年3月26日~29日に開催されるセキュリティ・キャンプ2026コネクトの概要と参加募集要項が公開されました。
今回、その中のクラスの一つ、脅威クラスのプロデューサ兼講師を務めさせていただくことになりました。この投稿では、プロデューサとしてどのような設計思想でコース策定をしたか、その考えを記載したいと思います。
セキュリティ・キャンプコネクトとは?
セキュリティ・キャンプコネクトとは、公式サイトにも記載されている通り、他分野とサイバーセキュリティの橋渡しをする人材として、従来の枠にとらわれない人材育成を目的にしています。
その中で、脅威クラスでは、「脅威×サイバーセキュリティ」をテーマにしています。
具体的には以下の通りですが、特にサイバーセキュリティ空間における脅威は、多種多様にわたっています。そのため、脅威を包括的に学んでもらうというコンセプトでクラス設計を行っています。
サイバーセキュリティ上の問題は、常に「脅威主体」で行われます。
本講義では、脅威情報の収集・分析技法、および脅威自体の理解(攻撃者の理解)について、技術的・非技術的な観点から学ぶことで、セキュリティ対策/対応を進められるようにすることを目的としています。
前半では、サイバー空間における技術的な観点から外観を学ぶとともに、脅威分析手法、脅威に基づいてシステムを分析する脅威モデリングを学びます。
後半では、サイバー空間における偽情報や情報作戦、および情報心理学について学び、非技術的なサイバー空間上の脅威について学びます。
技術・非技術両方の観点から脅威情報の収集・分析技法について体系的に学びたい方にとって、実例を学びながらできる講義を行います。
脅威クラスの設計思想
今回の脅威クラスは、「2×2+1」という軸を用いて設計しています。
まず、2×2の各軸は以下を意味します。
- 軸1:技術 - 非技術
- 軸2:マクロ - ミクロ
軸1:技術 - 非技術
サイバー空間における脅威は、いわゆるサイバー攻撃のような技術的な脅威だけではありません。近年では、偽情報の流布や情報操作といった非技術的な脅威も大きな影響力を持つようになっています。特に、誰もが自由に情報発信できる現代のサイバー空間において、偽情報は社会や政治、国際関係にまで影響を及ぼす重要な脅威の一つです。
そのため本クラスでは、「技術」「非技術」の両面から脅威を理解できるよう、以下の構成で講義を行います。
- Day2(27日):技術的な脅威分析
- Day3(28日):非技術的な脅威分析
軸2:マクロ - ミクロ
縦軸では、脅威をミクロとマクロの視点で捉えます。
技術的観点においては、
- 個別の攻撃手法や具体的な脅威に注目するミクロな分析を石川が担当します。
- 攻撃キャンペーンや攻撃グループといった単位で脅威を捉えるマクロな分析については、佐々木先生にご講義いただきます。
非技術的観点においては、
- 偽情報のメカニズムを理解するためには、個人と情報の関係、すなわち心理学的な理解が欠かせません。このミクロな視点については鈴木先生にお願いしています。
- それに対し、偽情報や情報作戦を社会・国家レベルで捉えるマクロな視点については、長迫先生にご講義いただきます。
国際関係と脅威分析
2×2の軸を通じて、「さまざまな視点から脅威にどう向き合うか」を学んだ上で、最後の「+1」として位置づけているのが国際関係の視点です。
現代の脅威活動は、外交や地政学と強く結びついており、国際関係の文脈抜きには語れません。本講義の締めくくりとして、最も巨視的な視点である国際関係の観点から、サイバー空間上の脅威をどのように捉えるべきかについて、小宮山先生にご講義いただきます。
コース設計の3種類のこだわり
今回の「脅威クラス」は、上述した設計思想をもとに構成しています。初めての試みであり、現在も細部を詰めている段階ではありますが、「脅威」を包括的に理解する講座として、できる限りの要素を盛り込みました。
特に、以下の3点にこだわって設計しています。
こだわり①:複眼的思考を身につける
本講座では、脅威を単一の視点で捉えるのではなく、
- マクロな視点で全体像を見る「鳥の目」
- ミクロな視点で詳細を見る「虫の目」
- 時代や国際情勢の流れを捉える「魚の目」
これらを行き来できる複眼的思考を養うことを重視しており、講師の方々にも、複数の視点や分析手法を意識した講義をお願いしています。
こだわり②:ハンズオンで学ぶ
学んだ内容が「机上の空論」で終わらないよう、演習(ハンズオン)にも力を入れています。実際に手を動かして分析することで、理論の難しさや面白さ、そして脅威分析のリアルを体感してもらうことを狙いとしています。
こだわり③:ゼミ形式で学ぶ
本クラスは、講義を一方的に聞くだけではなく、ゼミ形式を意識しています。講義やハンズオンで得た知見をもとに、講師・参加者同士で議論し、理解を深めることを重視しています。
脅威分析には「唯一の正解」が存在しない側面もあります。だからこそ、新たな問いや課題を見つけ、講師・参加者とともに考えていく場にしたいと考えています。
お願い - ぜひ応募ください!
本クラスは、応募要件を満たす主に学生の方を対象に、無料で受講できる貴重な機会ですので、ぜひ積極的にご参加ください(応募要件や締切については、必ず公式サイトの情報をご確認ください)。
- エントリー締切:1月6日(火)
- 応募課題提出締切:1月13日(火)
「セキュリティ・キャンプ2026コネクト 脅威クラス」という名称かつ、応募要件にある通り、一定のセキュリティ学習経験や興味は前提となりますが、政治学や国際関係、心理学など、セキュリティ以外を主専攻とする学生の方にも広く参加いただきたいクラスです。少しでも興味を持っていただけた方は、まずはエントリーをお願いします。
また、残念ながら応募要件を満たさない方、特に社会人の方々には、本エントリーやブログ投稿をぜひ共有いただき、より多くの方に届くようご協力いただければ幸いです。